PMアシストのサービス立ち上げ当初からご愛用頂き、色々な形で実証実験や社内導入事例を作ってきてくださった東急住宅リース株式会社の佐瀬様の成功事例インタビューです。
http://www.tokyu-housing-lease.co.jp/service/achieve/index.html
田中:貴社とは、業界変革会議(東急住宅リース社が開催したスタートアップとの共創支援プログラム)に参加させていただいてからのお付き合いをさせていただいております。今回は貴社から見たギグベースに対するイメージ・感じている部分を色々とお聞かせください。
佐瀬様:はい。まずPMアシストのサービスコンセプトを聞いた時に「狙いどころが良いなー」と思ったのを覚えています。
田中 :ありがとうございます。それは具体的にはどういう部分でお感じになったのでしょうか?
佐瀬様:リアルエステートテックには大きく分けて3つのテーマ/ジャンルが存在していると認識しています。
上記のテーマの業務効率化 / 業務支援 の中でバリューチェーン別に考えると、「大半のスタートアップが"契約&申込"関連のサービスを提供している」のです。
そんな中PMアシストは「建物管理 / 現地作業」というすごーく地味な領域を狙っていくと。聞いてそこが逆に面白いと思いました。
田中 :おっしゃる通り、一見地味に見えるのですがなかなか奥が深いテーマでして(笑)
佐瀬様:そうですね。「建物管理」というテーマは、テクノロジーのことを理解しているだけではサービス構築が難しいですからね。業務への理解・ノウハウの蓄積が必須。
そういう意味で他社がなかなか参入しにくい領域かもしれません。そういった点を総合して、良いところに目をつけているなー。と思ったわけなんです。
田中 :ありがとうございます!自分たちでも整理できていないポジショニングマップを描いていただいたような感覚です!
田中 :貴社は業界でも指折りの大手企業様なわけですが、導入にあたっての不安な点や心配だった点はなかったのですか?
佐瀬様:それはやっぱりありましたよね(笑)だけど、新しい取り組みや共創支援をうたっている以上、全く不安や心配がないものなんてあり得ませんし最後は「エイヤ!」で進めるしかないのです。ただ社内からあがってきた不安に対して1つ1つ潰せるようにサービスを設計していらっしゃったのは、導入を推進する側としてはやり易かったですね。
田中 :具体的にはどんな不安のお声があったのでしょうか?
佐瀬様:色々ありましたが、一番懸念されたのは人の部分だったように記憶しています。PMアシストの事業モデルを聞いて最初に感じるのは「クラウドソーシング」のように不特定多数のスタッフに対して仕事をアウトソーシングするのかな?という点。
現地での軽作業とはいえ、現地で所有者様・入居者様にお会いしたり、ある意味で当社の代理として現地へ訪問している感覚もあります。そこに何も教育を受けていない / 指導されていないスタッフが現地訪問すれば、当然何かしら不測の事態が起きるリスクを抱えることになります。
その点PMアシストに関しては、マニュアルや専用のアプリを活用しながら事前の教育指導に力を入れていると伺っていたので、そこは導入を前に進める上で大きかったなーと考えています。
田中 :ありがとうございます!人員の選定や業務マニュアルの構築は非常に当社で重要視している部分です。1回の作業自体の価格は高額なものではありませんが、扱っているもの(=不動産)は非常に高額。入居者様でいえば毎月数万円程度のお買い物をしている方々ですし、オーナー様で言えば数億円の高額な資産を貴社に任せているわけですからね。
田中 :当社のサービスを導入いただき大きかった効果・メリットはどういった点にあるとお考えでしょうか?
佐瀬様:働き方改革。労働生産性の向上。という部分に集約されると思っています。不動産管理業をしている方ならだいたいご理解いただけると思いますが、「誰が行っても同じような単純な作業でも誰かが行かなければならない」局面の連続なんですよね。これが社員にとっての普通・当たり前のことになってしまうと、だんだん感覚が麻痺してきてしまいます。電車や車で往復1時間かけて、注意文1枚を掲示して帰ってくる。労働生産性を向上させよう!ってタイミングでこれはおかしいですよね。
田中 :私が、PMアシストを立ち上げて不動産業界の大先輩から教わったことの1つとして、「不動産業界最大のコストは"移動コスト"である」という点でした。
佐瀬様:そうですね。特に不動産管理会社は不動産業界のビジネスの中でも「多数の人」を抱えながらビジネスを効率化していかなければならないので、こういった地味に見える部分から改善して行く必要があります。
上記のポイントを考えると、不動産管理業はIT / テクノロジーによる業務効率化 / 業界構造の変化の恩恵を受けるだと考えています。
田中:冒頭でも触れさせて頂きました、業界変革会議(東急住宅リース社が開催したスタートアップとの共創支援プログラム)を開催されたのは、スタートアップを支援するという文脈から考えても比較的早い段階から開始していたと考えています。(いわゆるファンド / VCが主催するアクセラレーションプログラムではなく、事業会社がシナジー創出のための取り組みとして考えた際に)
佐瀬様:そこは完全に代表の北川の先見の明と言えますよね。ITやスタートアップとの共創を通じて、スタートアップの活性化・自社の活性化・業界の活性化をしていこう!という大方針を掲げとにかくまずやってみる。やってみてブラッシュアップをスピーディーにしていく。という感じでした。
会議を進めて行く中で、オープンイノベーションを推進する上でのポイントも見えてきました。
上記を意識しつつ進めていくことが重要だと思っています。
田中:実際に私も参加している中で、会議や場自体のスピードが加速度的にあがっていくのを感じていました。加えて、東急さんの取り組みにきているスタートアップ同士の連携、そういった方々の周辺の企業とのコラボなどが広がっていき非常に有意義な場に参加させて頂いたと感謝しています。
佐瀬様:そこは当社としても感謝をしております。というのも、あの取り組み以降色々なリアルエステートテック関連企業様から、ご協業の打診などが入るようになりました。情報が入ってくることも非常に大きいですがやはり人的なネットワークが広がっていく点も重要だと考えています。不動産管理会社は、色々なステークホルダーがいて(テナント/所有者/仲介会社/修繕会社 etc..)人的ネットワークによって事業を成立させている部分が大きいため、こうして情報と人的ネットワークが大きくなっていくのが当社の事業推進していく上での一つの武器になってきています。
田中:なるほどですね!あれだけ大々的に門戸を広げている印象を業界に認知されるとそんな副産物が生まれてくるのですね!!
田中 :少し話がそれますが東急住宅リース社はもともと3社合併で誕生した会社ですよね?そういった意味ではスタートアップとの取り組みもそうですが、似ているようで違う企業文化同士を取り込みそれを活かしていくのが、得意技なんでしょうか?
佐瀬様:そうですね。得意技という程ではありませんが、3社が合併し1つの企業になりそこから成長していくプロセスはとても貴重な経験でした。同じグループ企業とはいえ不動産管理に対しての手法や細かいルールが微妙に違っていました。基幹システムや契約書・ワークフローなどの統合はやはり一筋縄ではいかず、大変な思いからスタートしたことを覚えています。そういった大変な思いからスタートしたものの、3社合併によって、「1+1 = 2以上」の方程式が生まれていき結果として全体最適につながったかと思います。
田中 :具体的にどのような部分で 1+1= 2以上 の実感を得られたのでしょうか?
佐瀬様:挙げ出すと多数あるのですが一番わかりやすい例として。3社の中で自社仲介店舗有無の違いがありました。普通に考えると仲介店舗を保有している方がリーシング上有利に考えがちですが、3社合併によって自社仲介店舗を廃止しました。これで何が起きたかというと、自社仲介店舗に頼っていた物件の入居率がUPしました。
田中 :意外ですね!店舗を保有していた方が何かとスピーディーに対応できるし客付力があるように思えますが。
佐瀬様:そこは、自社だけの力(人力)で客付をしようという思いと、他社の力(ネットワーク)で客付をしようと思いの差かなーと思っています。もちろんエリアや管理している物件の種類などによって違いはあると思いますが、他社の力を上手に活用した方が結果トータルバランスで上手くいくのだと思っています。私は、これは今回3社統合や仲介店舗の話に限らずビジネス全般に言えるのだと感じます。
佐瀬様:他社の力を上手に活用し双方に有益な提携を仕掛けていくことが重要。とお伝えしましたが、これは代表の北川含め当社は不動産管理業を一種のプラットフォーム業だと捉えています。いわゆるITサービスでのプラットフォームはシステムとネットワークです。
・不動産管理業におけるプラットフォームは、システム=不動産/業務ソリューション ネットワーク=テナント/オーナー/仲介会社/修繕会社との結びつき
だと定義できます。
田中 :確かにそうですね。87,000室の管理物件をお持ちであれば、常に87,000人以上のテナント及び、対象不動産の所有者様との間で情報+お金のやり取りをしているわけですね。
佐瀬様:そうなんです。もちろん言うまでもなくシステム(=不動産自体の価値 / 業務システム)の強化は重要ですが、そこにネットワーク力の強化を図っていくことによる強みの創出もあり得るな。と思っています。有名な例かもしれませんが、iPhoneはシステム(=デバイスの力)だけではなく、ネットワーク=(多種多様なアプリベンダー)の力が競争力の源泉になっています。いまの時代システムの力だけでは勝てないんですよね。そこにユニークで強力なネットワークもセットになって初めて競合との差別化要因を生み出していくことができるんだと思っています。
田中 :わかりやすい例えですね!当社もPMアシスト事業に対して全く同じ価値観をもっています。業務報告のツールを独自開発しスタッフ全員にアプリケーションとして配布していますが、これ自体にはさほど価値がなく、ここにネットワークが組み合わさった時により強固なものになっていくと思っています。
佐瀬様:そうですね!特に貴社の場合はネットワークに教育や訓練・トレーニングを付加しているので、数ではなく質の面で考えたとしても強力なネットワークなんだと考えています。そういった意味では当社もこれからも継続的に業界内外との有機的なネットワーク形成によってより強固なプラットフォーム構築に邁進していければと思っています!
田中 :ありがとうございます。色々なお話をお伺いさせて頂きましたが、全体的に当社の事業の進め方の指針になるようなお話が多く大変勉強になりました!
佐瀬様:いえいえ!今後ともよろしくお願いします!